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【ネタバレ有り】小説「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の感想

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小説「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」を読みました。「今度映画化するし、話題を先取りしておくか」くらいの軽い気持ちで読み始めたのですが・・・切な過ぎる結末に心をガツンとやられてしまいました。

ネタバレ含みつつ感想を書きます。 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

 

 

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あらすじ

本作は両想いの男女の「すれ違い」をテーマにしたお話です。ただし、すれ違っているのは2人の心ではなく、2人の時間。

こことは違う別世界からやってきたヒロイン・福寿愛美の時間は、主人公・南山高寿の時間と逆方向に動きます。

彼女にとっての「明日」は、彼にとっての「昨日」。
彼女にとっての「昨日」は、彼にとっての「明日」。

彼女にとっての「出会い」の瞬間は、彼にとっての「別れ」の瞬間。 
彼女にとっての「別れ」の瞬間は、彼にとっての「出会い」の瞬間。

この時間のすれ違いが、2人に切なく過酷な運命を与えることになります。しかしその運命の1ページ1ページは、2人にとって大切な歴史でもあり・・・

別世界からやってくる者のルールとして、5年に1度40日間しか滞在できません。2人が同年齢の「恋人」でいられるのはたった40日間。その日々を2人は全力で駆け抜けます。

 

ヒロインがとても愛らしく、主人公に感情移入できるからこそ切ない

物語と言うものは、話のプロット自体が上手くできていても、登場人物に魅力がなくては片手落ちです。やはり登場人物たちの織り成す世界に自分を投入できてこそ心からの感動と言えるわけで、登場人物に感情移入できるかどうかって大きいですよね。


主人公・南山高寿の一人称で語られる本作は、ヒロイン・福寿愛美の魅力がとても上手に表現されていました。福寿愛美の口調や仕草のひとつひとつがとても可愛らしく、南山高寿が惚れるのも無理はないなと思わされます。

 

思い出を共有できない悲しさ

南山高寿にとっての明日は福寿愛美の昨日。つまり、2人は思い出を共有できないということになります。事前に情報だけ知ることは可能ですし作中でもそのようにしていますが、それはあくまでも「情報」。彼と彼女が会って話している今この瞬間に、彼が体験している「昨日」を彼女はまだ体験してません。彼女の体験している「昨日」を彼はまだ体験していません。大切な人と思い出を共有することができないことがどんなに悲しく辛いことか、主人公達がどんな思いで毎日会っていたか、それに心を馳せるととても切なくなります。

「過去」も「未来」も本当の意味では共有できない2人。共有できるのは「現在」だけ。だからこそ2人は貴重な一瞬を強く求め合う。お互いのその想いが伝わるからこそ、切なく愛おしい。

 

「また会えるかな?」「また会えるよ!」

時間が逆方向に動いていると言うことは、2人の関係は日を追うごとに希薄になっていくことを意味します。

少しずつ恋人ではなくなっていく日々。最後には出会う前の状態に。

 

彼にとっての初めの日(彼女にとっては最後の日)、彼女に一目ぼれした彼はこう言います。
「また会えるかな?」

彼女は涙を浮かべながら懸命に笑顔を作って答えます。
「また会えるよ!」

その涙の意味を理解できなかった南山高寿も、彼にとっての最後の日には同じ想いを抱きながら、声を振りしぼります。
「また会おう!」

 

彼女視点となってラストから遡って読んでいくのも面白い

本の背表紙にこう書かれています。
「彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。」

 

タネを知った上で最初から読むのももちろん楽しいですが、彼女視点の時間軸に沿って物語の結末→始まりの方向へ読んでいくのも楽しいです。彼女がどんな想いで彼との日々を送っていたか、痛いほど伝わってきます。彼女にとってのラストシーン(つまり物語の冒頭)で「これはいいよね」とつぶやきながら彼に抱きつくところが非常に切なく号泣ものです。

 

まとめ

今年はあまり小説を読んでいませんでしたが、1年の終わりにこんなに切なくも美しい物語に出会えて良かったです。幅広い人におすすめできるお話です。

 

活字が苦手という人はもうすぐ上映する映画や、既に発売されているコミック版で見てみてもいいかも。

 

映画は12/17(土)に封切り。主人公は仮面ライダーシリーズ等でおなじみの福士蒼汰さん、ヒロインは小松菜奈さん(「バクマン」の亜豆美保役や「渇き」の藤島加奈子役、など)が演じます。

www.bokuasu-movie.com


「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」予告

 

 

 

こちらはコミック版。少女マンガ調の絵が綺麗。

このマンガがすごい! Comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする 1 (このマンガがすごい!comics)

このマンガがすごい! Comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする 1 (このマンガがすごい!comics)

 

 

 

 

なお、余談ではありますが、本の帯にこんなことが書かれていました。

「2015年 10代~20代女性が読んだ文庫本 1位」

 どうやら僕の感受性は若い女性のソレと同質であったようですw