意識低い系ドットコム

漫画の感想、IT業界のよもやま話、古銭収集など、雑多な話題を意識低くお届けします

ナイツ塙さんの本「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」を読んだ感想

当ブログではアフィリエイト広告を利用しています

ナイツのボケ役・ 塙さんがM-1グランプリを分析した本「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」を読みました。

 

  • 関東芸人は何故不利なのか?
  • 優勝するコンビと優勝できないコンビの違いは?

M-1決勝経験者の視点からの考察が面白く、一気に読んじゃいました。

 

特に印象深かった点など挙げつつ、感想を書きます。

 

 

2018年までかまいたちがM-1グランプリで低評価だった理由

去年(2019年)のM-1はかまいたちが奮闘し、準優勝しました。僕の好み的にはかまいたちが一番面白かったですが、優勝したミルクボーイが汎用性の高い笑いだったのは間違いないので、結果に特に不満は無いです。というか、2019年はレベルが高すぎた・・・

 

納得がいかなかったのは、むしろ2018までの結果です。2018年の「ポイントカード」ネタも、2017年の「怖い話」ネタも十分すぎるほど面白いと思いましたが、最終3組には残れず。

 

「かまいたちの漫才の何がダメなんだろ?どこがマイナスポイントなんだろ?」

とずっと思ってましたが、この本で見事に言語化されていました。

 

曰く、

  • 漫才はボケ役とツッコミ訳と客で三角形を構成するのが理想(これは島田紳助氏も言っていたらしいです)
  • 2018年までのかまいたちのネタは山内の「主張」に主眼が置かれていたため、濱家のツッコミパターンが限定されてしまい、客を上手く巻き込むこともできなかったため、「三角形」ではなく「点」になっていた
  • ツッコミが単調になりがちな分、ボケ(山内の「主張」)でしか笑いがとれず、笑いの量が不足してしまった

とのことです。なるほど、理詰めで説明してもらえると、確かにもっともです。

 

逆に、2019年にかまいたちが1stラウンドで660点という高得点を叩き出して最終3組に残れたのは、上記の欠点を克服したネタだったからこそ、とも言えます。

 

UFJとUSJの言い間違いを濱家さんに擦り付けて開き直ることにより、山内さんの「主張」に高密度で濱家さんを巻き込むことができます。

 

その結果、濱家さんも存分にボキャブラリーを発揮しながら「反論」して、そこでさらに笑いを取ることが出来ました。

 

 

 

好きと得意の融合「ヤホー漫才」

お笑いコンビナイツの十八番といえば、言わずと知れた「ヤホー漫才」です。

 

  • 塙さんが言い間違える
  • 土屋さんが訂正する

この小ボケを延々と繰り広げていくスタイルですね。

 

ナイツがヤホー漫才という武器を手に入れるまでにはいろいろ迷走したようで、他の売れてるお笑いコンビのスタイルを取り入れようとしてもなかなかうまくいかなかったようです。

 

そもそもナイツはちょっとした小ボケで笑いを取ることはできても、肝心のネタの内容がなかなか受けなかったとのこと。

 

そこから、

「なら、その得意な小ボケをどんどんつなげていき、それ自体をネタにすればいいのでは?」

という着想を得て、なおかつどんどんネタが浮かんできて話しやすい好きな話題(野球や相撲など)をネタに取り込んでいったそうです。まさに「得意」と「好き」の融合。

 

好きなことを言い間違えるのは不自然なので、「ヤホーで調べた」形にして、ヤホー漫才の完成です。上手いこと考えたものですよねぇ。

 

 

「笑い」に理屈は要らないと思ってたけど

僕はお笑い好きを自認していますが、「笑い」にはあまり理屈って要らないと思ってるほうです。

  • 面白い
  • 面白くない

これのみが重要であって、何がどう面白いのかを説明するのって野暮だし蛇足だな、と。

 

そういう意味では僕にとって「笑い」と「料理」って似たようなもんですよ。僕は料理漫画ってあまり好きじゃないんですが、素材がどうの味付けがどうのと「美味しさ」の理屈なんてどうでもよくて、つまるところ「僕が美味しいと感じるかどうか」だけです。

 

美味しいものは美味しいし不味いものは不味い、面白いものは面白いしつまらないものはつまらない、それでいいじゃないか。と、考えてました。

 

ただ、この本を読んで思ったのは、自分が面白いと思っているもの(あるいはつまらないと思ってるもの)を、

「実はね、この面白さにはこういうからくり(理由)があったのさ」

と識者に教えてもらえるのも、これはこれで良いものだな、と。

 

 

そのくらいナイツ塙さんのお笑い論議には説得力がありました。知識と経験による裏付けはさすがです。