意識低い系ドットコム

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トイレの中の宇宙戦争

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こんにちは、意識低い系サラリーマンのKENです。

 

今回はトイレのお話です。食事中の方とかはご注意ください。

 

 

いつものなんでもない日常の光景。
会社で仕事中に便意をもよおした僕はトイレに入った。
洋式トイレがいっぱいだったので、和式トイレのほうに。


用を足して体を清めた後、水洗トイレのレバーをグイっと押す。

 

ジャーッ!

 

日常のヒトコマはここで崩壊した。大便が流れないのである。
流れないなんてもんじゃない。微動だにしていない。

瞬間的に焦りそうになる心を抑え、冷静に観察してみる。
大便に問題は無いと思う。硬さ、色、量ともにごくごくありふれた大便だ。

では、トイレの水洗力に問題が?
しかし、先ほどの音からいって、特に弱かったというわけではないと思われる。

とりあえずもう一回流してみよう。

 

ジャーッ!

 

微動だにしない。便器に根をはっているのかのようだ。
何かがおかしい。この零細IT企業のトイレの個室内で一体何が起きているんだ?

 

ここでひとつの仮説を立ててみる。

 

もしも、僕が大便だと思っているこの物体が、実は大便じゃなかったら?
人知を超えた宇宙的存在で、地球侵略を企んでいたとしたら?
そして、地球侵略の最初の一歩として、この零細IT企業の男子トイレの個室を選んだのだとしたら?

 

そう思い至ったとき、バラバラだった点が1本の線でつながった。
もはや疑う余地も無い。この大便に酷似した物体(以下、コードネーム「ビッグ・ベン」と呼称する)はいままさに地球侵略を開始しようとしているのだ。

 

地球だとか、世界だとか、そんな大きな存在を意識して普段生活しているわけではない。何しろただのしがない意識低い系サラリーマンだ。
だが、僕には愛する家族がいる。守るべき存在がいる。それならばいまやるべきことはただひとつ。

 

僕のこの手で、宇宙からの招かれざる来訪者を駆逐するのだ。僕は地球を守るべく立ち上がった戦士なのだ。

 

さて、とはいうものの、どうする?
ビッグ・ベンに水洗攻撃が効かないのは既に実証済みだ。
いっそ、個室を出て助けを呼びに行くか?あるいは、掃除用具入れを調べれば、もっと有効な武器が見つかるかもしれない。

 

・・・いや、ダメだ。もしその間に誰かにこの個室を見られたら危険すぎる。
普通の人間がビッグ・ベンの放つ臭気に当てられたらひとたまりもない。

 

そもそも、事情を知らない人間がこの状況を見たら、大便が放置されているようにしか見えないだろう。
それではダメなのだ。僕は地球を守るべく立ち上がった戦士だ(大事なことなので2回言った)。「大便を流さない男」などという不名誉極まりない名称で上書き保存される愚は犯せない。

 

手持ちのカードで勝負するしかないのだ。
手詰まり感を感じつつ、ダメ元でもう一回流してみる。

 

ジャーッ!

 

ん?いまわずかに動いた気がする。形も若干崩れている。
何故あれほど強固だったビッグ・ベンが・・・

 

そうか!僕は重大な勘違いをしていたんだ!
僕はビッグ・ベンを単一の意識体だと思い込んでいた。
だが、違うのだ。おそらくビッグ・ベンは複数の意識の集合体、ビッグ・ベン「たち」なのだ。
そしてビッグ・ベンたちは決して一枚岩ではないのだろう。地球侵略のためやむなく手を組んでいるだけなのかもしれない。
度重なる水洗攻撃を受けて、その暫定的な結束にヒビが入ったというわけだ。

 

ならば、この機を逃さず、押しまくるのみ!
水洗レバーを再び押し込む!!

 

チョロッ・・・

 

バカな、こんなときに弾切れだと!?リロード遅いよ、何やってんの!
弾切れをビッグ・ベンたちに悟られるわけにはいかない。せっかくいま流れは地球側にあるのだ。
内心の動揺を押し隠し、僕はビッグ・ベンたちに向かってニヒルな笑みを浮かべてやる。
お前たちの生殺与奪はあくまで僕が握っているんだぞ、ということを示すのだ。

 

よし、リロード完了だ。
レバーを押し込む!

 

ジャーッ!

 

今度の攻撃は効いた。ビッグ・ベンたちの勢力のおよそ8割は消失した。もはや時間の問題だろう。この状況でもしぶとく残っているビッグ・ベンはおそらくビッグ・ベンたちのボス的存在、コアとも呼ぶべきものだろう(以下、コードネーム「ファイナル・ベン」と呼称する)

 

僕はファイナル・ベンに水洗攻撃を加える。

 

ジャーッ!

 

・・・まだ残っている。もうほとんどビッグ・ベンたちの勢力は瓦解している。それでもなお、数%のファイナル・ベンが残って抵抗を続けているこの光景に、僕は奇妙な感動を覚えていた。
死力を尽くして戦った者同士は、敵から友になる。

 

僕は友に語りかける。

 

「なぁ、もういいだろ・・・?お前は、いや、お前たちは良くやったよ。僕はもう5回も水洗攻撃を行っている。水道代を考えると自宅のトイレでなくて良かったと思うほどだ。周りを見てみろよ。あれだけいたお前の仲間はもうほとんどいない。もうお前も休んでもいいんじゃないのか?」

 

そのときだった。
ファイナル・ベンが諦めにも似た吐息を漏らしたような気がした。
宇宙からの侵略者にそのような感情があるのかどうかもわからないが、たしかにそう感じたのだ。

 

もう、終わらせるときだ。


さようなら、ファイナル・ベン・・・もしお前が地球人として生まれ変わったら、美味い酒でも飲み交わそうぜ。
万感の思いをこめて、僕は水洗レバーを押し込んだ。

 

ジャーッ!

 

最後まで残って抵抗を続けていたファイナル・ベンが、水洗トイレの闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

同僚「ずいぶん長いトイレだったな。トイレで昼寝でもしてたのか?(笑)」

自席に戻った僕に、同僚が茶化しながら声をかけてくる。
やれやれ、自社のトイレ内で地球存亡をかけた戦いが行われていたとも知らず、ずいんぶん暢気なことだ。

 

いっそ教えてやろうか。いま何が起きていたのかを。

 

いや、よそう。どうせ信じてもらえるわけもない。
仮に信じてもらえたとしても、トイレの個室が宇宙からの侵略者のターゲットにされることがあると知れば、今後怖くてトイレに行けなくなるかもしれない。

 

 

もしあなたがなかなか流れない頑固な大便に遭遇したとしたら、それは地球侵略をたくらむビッグ・ベンかもしれない。
そのときは、慌てず騒がず、このブログ記事の内容を思い出して冷静に対処して欲しい。有事に備え、この記事をはてなブックマーク登録しておくと便利だろう。

 

僕たちが勇気と知恵を持って戦えば、ビッグベンは決して倒せない相手ではないのだから・・・

 

 

今回はこのあたりで。

 

(余談)

今回の話、もっと前に書くつもりだったんですが、スマホにメモってあるブログネタ帳に「ビッグ・ベン」とだけ書いてあって、「なんだよビッグ・ベンって。このメモ意味わかんねーよ!」としばらく放置していました。メモはもっときちんと書かないとダメですね。