一部の富裕層や趣味人の間で密かなブームだった「アンティークコイン」ですが、日経新聞が取り上げた影響もあり、話題に上ることが増えてきました。
「最近話題のアンティークコインに興味があるけど、何をどう集めればいいのかさっぱりわからない」
という人も多いかと思います。
コイン収集歴20年以上(長いだけで深くは無い)の僕が個人的におすすめなアンティークコインを紹介します。
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アンティークコインとは
アンティークコインの厳密な定義は定まっていません。
ようするに時代を経た古いコインのことなんですが、「100年以上前のコイン」と言う人もいれば「第二次世界大戦前のコイン」と 言う人もいます。
大昔の権力者の肖像や都市景観を描くコインはまさに歴史の証人とも言える存在で、アンティークコインの持つ歴史力に惹かれて収集を始める人も多いです。
アンティークコインはその性質上、数が減ることはあっても増えることはない*1ため、どんどん希少性が高まって値段も上がっていく傾向があります。そこに目をつけた富裕層の投資や資産保全に利用されている側面もあります。
アンティークコインはヤフオクやメルカリなどでも購入できますが、より安心できる取引をしたい場合はやはり専門の古銭業者などから入手することをおすすめします。日本貨幣商組合の加盟店であれば一定の信頼が担保されています。
予算別おすすめコイン
~1万円のコイン
アンティークコインというとすごく値が張るものと思われるかもしれませんが、1万円未満で入手できるタイプのものも数多くあります。このクラスですと投資対象とはなりにくいですが(希少価値が少なく値が上がりにくい上に、多少値上がりしても手数料で相殺されてしまう)、趣味として考えると100年以上前のコインを手元に置いておけるというのもなかなか乙なものです。
フランス領インドシナ1ピアストル銀貨
下の写真は、フランス領インドシナ(現在のベトナム、カンボジア、ラオス)で1895年から1928年まで発行されていた1ピアストル銀貨です。
女神座像の堂々たるデザインが魅力的な大型銀貨です。極美品(EF)以下の状態であれば5000円~1万円ほどで取引されています。ここ数年少しずつ値上がり傾向があるのか、1万円を超える取引もよく見かけるようになってきました。
直系39mm、量目27gと重厚感溢れる大型銀貨で、手に持ったときにズシっと来るのがたまりません。比較的容易に入手できるので、アンティークコイン入門用のコインとしては最適です。
1銭陶貨(未発行貨幣)
太平洋戦争末期に製造された1銭貨。なんと土で作られた貨幣です。
ご存知の通り、太平洋戦争末期の日本は慢性的な物資不足の状況にありました。ついには貨幣を製造するための金属調達にも困るようになり、考え出されたのが「陶貨」すなわち、土のお金。すごい発想しますよね・・・(笑)
こんなお金でもしっかりと日本の象徴である富士山が描かれているところに、大日本帝国最後の矜持を感じます。
1500万枚製造されたものの、流通する前に終戦を迎えてしまったっため幻の貨幣となりました。ただちに回収されましたがかなりの数が流出したらしく、2000円程度で入手可能です。話のタネに持ってても面白いかも。
1万円~10万円のコイン
趣味と資産保全を兼ねて収集を始めるなら、お手軽なこの価格帯のコインにターゲットを絞るのもいいですね。
スイス20フラン金貨(ヘルヴェティア)
スイス20フラン金貨、通称「アルプスと少女」です。直系21mm、量目6.45gと小振りな金貨です。
同じ図柄で10フラン金貨と100フラン金貨があり、100フラン金貨は発行枚数5000枚(うち1200枚は溶解)と稀少で、20世紀の珍品コインとして人気があります。
ただ、100フラン金貨は未使用品だと150万円以上が相場ですので、おいそれと手を出せるものでもありません。その点この20フラン金貨ならほぼ地金価格の3万円ほど(2017年11月現在)で手に入ります。
名品金貨と同じ図柄のコインを安価に手元に置けると思うと、ちょっとお得な気分です。
ワイマール共和国記念銀貨
1919年から1933年にかけて存在したドイツの国家「ワイマール共和国」。第一次世界大戦の賠償金支払いや世界大恐慌などもあり、経済が安定せずに短命に終わりました。
そんな大変な状況の中で発行されたワイマール共和国の記念銀貨(5マルク銀貨9種類、3マルク銀貨18種類)は、デザイン性に優れた素晴らしい記念貨シリーズです。ドイツの技術力はさすがですね。
下の写真はワイマール憲法10周年記念の5マルク銀貨。1万円~2万円ほどで入手可能です。
27種類全てコンプリートできればかなり見ごたえのあるコレクションが完成します。
10万円~100万円のコイン
本格的に投資対象としてコインを求めるなら、このくらいの価格帯が現実的と考えます。
あまり安いコインですと値上がり期待も低いので、あまり旨みがありません(純粋に趣味として集めるなら話は別ですが)。かといって100万円超のコインをほいほい買えるほど経済的に余裕のある人もそうそう多くないでしょうし。
下の写真はかつてポーランドに存在した自由都市「ダンツィヒ」の25グルデン金貨(1930年銘)です。
表面はトライデントを持つネプチューン、裏面は二頭のライオンと紋章。なかなか面白みのあるデザインです。
この金貨は発行枚数推定4000枚と稀少ながら、20万円~30万円ほどで入手可能です。状態の良いコインが多いため、収集目的としても投資目的としても申し分ありません。
100万円~のコイン
このクラスのコインはアンティークコイン・ブームもあり、近年どんどん値上がりしています。
発行枚数わずか400枚、世界一美しい金貨として名高い「ウナとライオン」(1839年イギリス5ポンド金貨)は数年前までは未使用品クラスを数百万円で入手可能でしたが、今では1000万円コインになってしまいました。
※未使用レベル
2015年 :3000万円~4000万円
2014年 :2000万円相当
2013年 :1000万円相当
2012年 :700-800万円相当
2011年 :400-500万円相当
発行枚数が16000枚もあり、少し前までは地金価値+α(20万円~40万円程度)で買えていた「雲上の女神」(1908年オーストリア フランツ・ヨーゼフ治世60周年記念金貨)は、その優れたデザイン性が評価され今では未使用品クラスで100万円コインに格上げされました。
そんな値上がり著しい100万円クラスのコインですが、狙い目としてイタリアの「1912年 ヴィットーリオ エマヌエーレ3世100リレ金貨」を挙げます。未使用品で100万円ちょっとで入手可能です。
発行枚数わずか4946枚ながら、発行枚数16000枚のオーストリア「雲上の女神」と同価格帯です。イギリス、オーストリア、フランスなどに比べ、イタリアコインは現在のところ相対的に割安であると言えます。
「豊穣の女神」とも呼ばれるこの金貨は、ヴィットーリオ エマヌエーレ3世が熱心なコイン研究家だった言うこともあり、非常に美しいコインです。割安なうちに入手しておくのもありかも。僕は資金力ないので買えませんが・・・
本格的に収集するならコインカタログは必需品
もし本格的にコイン収集を始めようとするなら、必須となるのが「コインカタログ」です。
何せ世の中には何十万種類ものコインがありますから、カタログがないことにはとてもじゃないですが把握しきれません。著名なコインコレクターの平木啓一氏も「カタログ無しにコイン収集するなど、海図も持たずに大海原に出るようなものだ」と指摘しています。
コインカタログで有名なのは、別名「電話帳」とも呼ばれる下記カタログです。
世界中のコインが時代ごとに1冊にまとめられているため、自分が集めたいと思っている時代のカタログを選ぶ必要があります。上のカタログは1801年~1900年版。
コインの直系、重さ、状態ごとの評価額が網羅されているとても便利なカタログです。英語表記なので抵抗のある人もいるかもしれませんが、さほど英語力を必要とする類の本でもないため、あまり心配はいりません。
このカタログは1冊1万円前後とかなり良いお値段がします。数千円クラスのコインを趣味で集めるだけであれば無くてもなんとかなるかもしれません。しかし、数十万~数百万のコインに手を出すことを考えれば、先行投資としてはむしろ安いくらいです。
ひとつ注意点として、カタログに書かれている評価額はあくまでも目安の1つに過ぎないことを頭に入れておく必要があります。というのも、コインの価格相場は刻一刻と変化しますが、カタログの改定はリアルタイムには行われないためです。
カタログで目当てのコインの情報を知った後は、現在進行形のコイン価格相場をチェックするといいでしょう。
コイン価格相場の調べ方については下記記事をご参照ください。
投資として買うなら、出口戦略をきっちり考えておこう
投資や資産保全目的でアンティークコインを買う場合、忘れてはならないのが出口戦略。すなわち、どこでどうやって売るか。手持ちのコインがせっかく値上がりしても売り方を間違えてしまっては元も子もありません。
コインの売却方法は大きく分けて、
- 買取専門業者に依頼する
- ヤフオクやメルカリなどで売る
- 古銭商に買い取ってもらう
- 古銭商に代行販売してもらう
- 古銭商主催のオークションに出品する
と5つの方法が考えられ、それぞれにメリット・デメリットがあります。詳しくは下記記事を参照してください。
アンティークコインについてもっと知りたい人は、平木 啓一先生の「アンティークコインで資産を防衛せよ!」がおすすめです。
*1:稀に未発見のアンティークコインが大量に発掘され値崩れすることもあります