アンティークコイン(古銭)の稀少性や人気に着目し、投資対象として古銭を選ぶ人が近年増えつつあります。実際わずか数年で2倍3倍と値上がりするコインも珍しくありません。
しかし当たり前のことですが、むやみやたらと古いコインを買えば良いというものではなく、将来値上がりが期待できるコインには一定の条件があります。
本記事では、コイン収集歴20数年の著者が考える「投資対象を選ぶ際の3つのポイント」を書きます。
※いわずもがなですが、投資は自己責任でお願いします。
コインの人気度
そもそも古銭が何故高値で売買されるかと言えば、高いお金を出してでも欲しがるコレクターがいるからです。つまり、当然といえば当然の話ですが、人気のあるコインでなければなりません。
ではどんなコインが人気が出やすいかと言うと、
- デザイン性に優れたコイン
- 歴史的背景が面白いコイン
- コレクター人口の多い国のコイン
といったあたりがポイントとなります。
デザイン性に優れたコイン
デザイン性に優れているといっても人それぞれ見方や好みは異なるわけですが、一般的にデザインが高く評価されているコインとしては、
- ゴチック・クラウン(イギリス)
- ウナとライオン(イギリス)
- アルプスと少女100フラン金貨(スイス)
- 雲上の女神100コロナ金貨(オーストリア)
- 旧20円金貨(日本)
などが挙げられます。
歴史的背景が面白いコイン
人気の源泉はデザインだけではありません。
数百年の時を経たコインには往々にして面白いエピソードがつきものなので、そういった歴史的背景が潜んだコインもコレクターに好まれます。
一例として、1815年銘のナポレオンコインがあります。1815年はナポレオンの百日天下*1の年であり、わずか百日の間に発行された金貨や銀貨は数も少なく、マニアから人気があります。
コレクター人口の多い国のコイン
あと、忘れてはならないのがコレクター人口です。コレクターの少ない国のコインは必然的に欲しがる人も少なくなるので、値上がりしにくくなります。コレクター人口の多い国として、
- アメリカ
- イギリス
- フランス
- オーストリア
- ドイツ
などがあります。
コインの稀少性(現存枚数の少なさ)
あるコインを欲しがる人が1万人いるのに、現在残っている枚数は100枚しかない・・・そんなことになれば、当然買い手が競合して値上がりします。稀少性というのは値上がりコインを見分ける上での大事なポイントです。
「ということは、発行枚数の少ないコインを買えばいいのか?」
概ね正解ではありますが、それだけではありません。仮に発行枚数が多くても何らかの理由で現存枚数*2が少なければ、希少価値が出てきます。
例えば、明治3年銘の旧20円金貨。46139枚も発行されていますが、状態の良いものであれば1000万円くらいします。
著名な金工師・加納夏雄の手によるデザインが高く評価されているというのもありますが、そもそも現存枚数がかなり少ないのです。
明治時代に日本と海外で金銀レシオが異なっていたことに目をつけられて、海外から大量に持ち込まれた銀を明治金貨と交換し、海外に持ち出して潰して売る・・・ということが行われていたため、まともな形で残っている明治金貨の数はかなり減っています。こうして希少性が生まれるコインもあるのです。
コインの状態
コインの価値を決める上で、状態というのはかなり重要なポイントとなります。コインを集めている側の気持ちで考えれば、少しでも綺麗な状態のコインを手に入れたい、と考えるのは自然なことです。
コインの状態は大きく分けると、
- 完全未使用品
- 未使用品
- 準未使用品
- 極美品
- 美品
- 並品
となります。*3
投資対象として考えるなら、
- 1800年以前のコインなら美品以上
- 1800年以降のコインなら極美以上
が1つの目安と考えていいでしょう。なるべく状態の良いコインをゲットしたいものです。
ネットでコインを買う場合、コイン商のほうで「極美」「未使用」などと状態を提示してくれていることがほとんどですが、できれば実際にコイン商まで足を運んで自分の目でじっくりと確認することをオススメします。
3つの条件が揃うことが大事
「人気」「稀少性」「状態」・・・これまでに挙げた3つの条件は、「3つのうち2つ満たせば良い」とかそういう類のものではなく、3つの条件が揃うコインに狙いを絞ることが重要です。
僕の体験談を1つお話します。
上の写真のコインは僕のお気に入りのコレクションであるイタリア1912年銘50リレ金貨、通称「豊穣の女神」です。*4
農具を扱う女性のデザインが美しく、コインの状態も国際的な鑑定会社PCGS社でMS63(未使用品相当)の評価を受けています。
良いコインだとは思いますが、数年前からほとんど値上がりしていません。金(ゴールド)相場の影響を受けて多少上がったり下がったりする程度です。
何故かといえば、11000枚という発行枚数がネックになっているからです。一般的に考えて11000枚という数はかなり少なめですが*5、高い希少価値を発揮するほどでは無いということです。
参考までに、前出したイギリスの人気コイン「ウナとライオン」は発行枚数はわずか400枚ですし、世界に数枚(あるいは1枚)しか無いというコインもあります。それに比べれば、11000枚という数はコレクターの目には「何処にでもあるコイン」と映るのです。
逆に、世界に10枚しか存在しないコインでも、不人気でそのコインを欲しがる人が5人しかいなければ(極端な例ですが)、値上がりしようがありません。
値上がり期待で古銭に投資するなら、人気・稀少性・状態すべて揃ったコインを買う必要がある、というのはこういった理由によるものです。
出口戦略をあらかじめ考えておくことも大事
投資対象として古銭を選ぶ以上、出口戦略、すなわち「最終的に古銭をどこで売るのか?」を考えておくことは重要です。
下記記事で、コインの種類別におすすめの売却先を書いていますので、こちらもあわせてどうぞ。
アンティークコイン投資本は何冊も出版されていますが、内容の良し悪しはともかく、煽り過剰気味の本が目立つ気がします。田中徹郎氏の最強のアンティーク・コイン投資は冷静かつ丁寧な語り口で、初心者にもわかりやすいのでおすすめです。