新型コロナウィルス感染を抑えるために、政府は出勤者の7割減を要請しています。
こういうとき、在宅ワークが可能な仕事に従事している人とそうでない人で格差ができたりしますよね・・・
僕の本業はシステム開発ですが、
「IT業界はパソコンとネットさえあれば仕事できるから羨ましい」
と思われがちです。
しかしIT業界といっても職種は多様で、中には在宅ワークと相性の悪い職種もあります。僕の専門である組み込み系エンジニアもその内の1つです・・・
開発には道具や機材が必要
組み込み系エンジニアとは、自動車や家電品などに組み込むソフトウェアを開発するエンジニアのことです。
仕事の性質上、開発時にはいろいろな道具が必要になります。テスターやオシロスコープ、場合によってはハンダゴテを使うことだってあります。
在宅ワークをしようと思うとパソコンだけではなくこれら道具も開発メンバーに支給しなくてはいけなくなるので、ハードルがぐっと上がります。というかそもそも、自宅でハンダとかあまり使いたくないですがw
仮に上で挙げたような道具を開発メンバーに支給したとしても、まだ問題があります。
組み込みソフトウェアを動作させる専用のハードウェア・・・開発中のASIC*1ボードやFPGA*2ボード、これが必要になります。
オシロスコープなどの汎用的な道具と違って、開発中のハードウェアはそれ自体が機密なので、セキュリティのことを考えるとそう簡単に社外に持ち出すわけにもいきません。そもそも、試作品で数も限られているので、開発メンバー全員に渡すのはなかなか困難です。
パソコンだけで出来ることは限られている
そうなると、組み込み系エンジニアが在宅でできる仕事って結構限られるんですよね。
「設計やコーディングのフェーズならパソコンだけでできるんじゃない?」
と思うかもしれませんが、さにあらず。
実際には、ハードウェア上での動作を確認して、その情報を設計にフィードバックさせながら設計やコーディングを進めていく・・・なんてことはザラにあります。新規設計のハードウェアの場合はなおさらで、そうでないと文字通り机上の空論で設計することになりかねませんので。
使用するセンサーや素子のデータシート読んだりとか、プロジェクト終了後の後始末(資料整理したりとか)とか、それくらいなら完全在宅でもできますが、それ以外の時はなんだかんだで会社の環境が必要になることが多いので、なかなか在宅ワークしづらいんですよね・・・
ちなみに僕の職場でも最近部分的に在宅ワークが始まりましたが、みんな週に1日とか2日とかそのくらいしか利用していません。
コロナショック後にますます人手不足になりそう
「組み込み系エンジニアはソフトウェアとハードウェア両方の知識を求められるため敷居が高く、それゆえ人手不足に陥っている」
という趣旨の記事を以前書いたことがあります。
コロナショック後の世界では、組み込み系エンジニア人手不足の理由に、
「在宅ワークと相性が悪いから」
という項目が追加になるかもしれません。
コロナショックによる不況が訪れて製造業が打撃を受けると一時的には組み込み系エンジニアの需要も減るかもしれませんが、IoT*3需要などはどんどん増えていく流れでしょうし、組み込み系エンジニアの需要も中長期的には高まる一方だと思われます。
しかし、コロナショックを教訓にした学生さんや現役エンジニアの人たちは、いざというときに在宅ワークをしづらい組み込み系エンジニアは敬遠するんじゃないでしょうか?
実際僕も、
「あーあ、組み込み系じゃなくてWeb系とかのキャリア積んでおけば、今頃完全在宅で仕事できてたかもなぁ・・・」
と、現在進行形で後悔しつつあるところですw
需要は大きくなっていくのに供給は減っていく。
数年後、組み込み業界は今まで以上の人手不足に見舞われそうな予感がします。