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海外SF「たんぽぽ娘」を読んだ感想

※本記事は「たんぽぽ娘」のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 

ロバート・F・ヤングの短編SF「たんぽぽ娘」を読んで感じた1つの疑問について、ちょっとした考察を書きます。

 

すなわち、何故ジュリーはマークを好きになったのか?

 

恋愛感情の理由や意図を考えるのは野暮かもと思いつつ、考えてみました。

 

あらすじ

未読の人向けに、簡単なあらすじ。

 

「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」

未来から来たというたんぽぽ色の髪を持つ少女と丘の上で出会ったマーク。

 

妻子持ちの身でしかも少女と自分との年の差は20歳以上。バカげたことと感じつつも少女に惹かれていくマーク。一方その頃、何も知らないはずのマークの妻アンは何故か不安な表情を浮かべていて・・・

 

たんぽぽ髪の少女ジュリーの正体は?妻の不安の理由は? ロバート・F・ヤングが織り成すロマンチックSFの名作です。

 

 

44歳の男と21歳の女

主人公のマークは44歳の男性。とりたててイケメンであるという描写も無いので、あくまで見た目はありふれた中年男性であろうと思います。

 

対するジュリーは21歳の女性。たんぽぽ色の髪、すらりとした肢体、愛らしい顔・・・はっきりと「美人」であると明記されているわけではありませんが、魅力的な女性であることがわかります。マークなどは「声を聞いているだけでも良い」と言っていますので、発する声もまた美しいものなのでしょう。

 

ジュリーがマークに「愛しています」と告白するまでに会った回数は4回です。しかも1回毎の時間もそう長くは無かったようです。

 

お世辞にも釣り合いが取れているとは考えづらい2人。何故ジュリーはマークを好きになったんでしょう?

 

 

マークの粋な反応と、父親への理解

最初会ったとき、ジュリーはマークに「240年後の未来から来た」と語ります。普通ならにわかに信じがたい荒唐無稽な話。ジュリーも相手が信じてくれると思って話してはいないでしょう。

 

マークはジュリーが未来から来たことは全く信じていませんでしたが、「信じてくれなくてもいいから話に乗ってほしい」というジュリーの言外のメッセージを受け取って、話を合せながら談笑します。

 

こういうマークの粋な心意気に、ジュリーは少なからず好感を抱いたのでしょうね。もちろん、この時点では恋愛感情とまではいかなくても。

 

決め手となったのは、ジュリーの父親の理論をマークが否定しなかったことでしょう。

 

タイムトラベル物といえば切っても切れないのが「タイムパラドックス」。過去に戻って何か干渉してしまったとき、未来が変わってしまう(矛盾が発生してしまう)というもの。ジュリーの未来ではこうしたことは起こりうるというのが定説となっているようです。

 

ジュリーの父親の理論は違っていて、例え過去に戻って何か干渉してしまっても、「時の書物」は既に書かれているので、その改変された過去もその人の一部となり、矛盾は起きないという理論。

 

非主流派の持論を持つ父親は、未来の世界で肩身の狭い思いをすることもあったのではないでしょうか?

 

父親を心から尊敬し愛しているジュリーにとって、その父親の理論を否定せずに自然体で受け入れてくれたマークはとても愛おしい存在に映ったことでしょう。年の差を越えた愛が芽生えたとしても不思議ではないのかもしれません。

 

しかしだからといって、マークの若い頃にタイムスリップして再び出会い、結ばれようとするとは・・・並大抵の覚悟でできることでもありません。(最愛の父を失って「何もなくなってしまった」とジュリーが感じていたことも大きいかもしれませんが)

 

物語中でそのことが明らかになったとき、ジュリーの情熱と行動力、そしてマークに対する愛情の強さに、思わずため息が漏れました。

 

 

短編集「たんぽぽ娘」に収録されている話の中では他に「河を下る旅」「主従問題」がお気に入りです。レビュー記事書いてるので良かったら読んでやってください。