本屋で平積みされていた小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」 を表紙買いしました。
読了直後の感想をつらつら書きます。ネタバレは極力避けますが、最終章だけは思いっきりネタバレしてますので、未読の方はご注意ください。
- あらすじ
- 一挙手一投足が愛らしいタング
- タングの言動を「愛らしい」と捉えるか「わがまま」と捉えるかで評価が分かれる
- 作者のあとがきを読んで納得
- 【ネタバレ注意】映画にするなら最後にもう少し盛り上がりが欲しい
あらすじ
Amazonの商品ページより引用
AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に従事するアンドロイドが日々モデルチェンジする、近未来のイギリス南部の村。法廷弁護士としてバリバリ働く妻エイミーとは対照的に、仕事も家事もせず親から譲り受けた家で漫然と過ごす34歳のベン。エイミーはそんな夫に苛立ち、夫婦はもはや崩壊寸前。
ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけのロボットのタングを見つける。「四角い胴体に四角い頭」という、あまりにもレトロな風体のタング。けれど巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直してやるため、作り主を探そうとアメリカに向かう。そこから、中年ダメ男と時代遅れのロボットの珍道中が始まった……。
「とにかくタングがかわいい!」と世界中の読者を虜にしている、抱きしめたいほど切ない物語。
AIが発達した近未来の話ということで、最初はSFかと思って読み始めました。確かにジャンルとしてはSFには違いないんですが、どちらかと言えばこれは育児ジャンルに入れたほうがよい作品かもしれません・・・
一挙手一投足が愛らしいタング
この作品の面白さの大部分は、おんぼろロボット・タングの愛らしさで出来ています。
- 最初は自分の名前と「オーガスト」という単語しか言えなかったのに、少しずつ言葉を覚えていくタング
- 「やだ」という言葉を覚えて以降、この言葉を多用してわがまま全開なタング
- 少し目を離すとすぐいなくなり、そんなときは決まって何か問題を起こしているタング
- 手足ばたばたしたり走り回ったり感情表現豊か(顔の表情は変わらないのに)なタング
もうね、ほんと一挙手一投足が愛らしいんです。しかもタングの愛らしい言動はどこか小さな子供にも通じるものなんですよね。上で挙げた話もほとんど幼児あるあるな話ばっかりな気がします。
それに対して保護者のベンは、
- ダメと注意しても聞かないタングにイライラ
- ついつい怒鳴ってしまって自己嫌悪
- でも結局タングの愛らしさに負けしちゃう
など、こっちも育児あるあるばかり。最初の頃は自分のことですら満足にできなかったベンも、タングのお世話を通じて少しずつ成長していきます。「子供に逆に育てられる」ところもまた、育児の王道ですね。
SF小説と見せかけた良質な育児小説と言っても過言ではありません。
タングの言動を「愛らしい」と捉えるか「わがまま」と捉えるかで評価が分かれる
本作品のAmazonレビューページの評価は平均4.0(2020年1月31日時点)ですが、評価は★5から★1まで結構ばらけてます。
低評価を付けた人のコメントを読むと、
癇癪持ちの子供のようなロボットの様子を
「かわいい」と受け取るかどうかで評価が分かれる内容で、
作品の魅力をロボットのキャラクターのみに頼っているのが残念。
個人的にはワガママばかりのロボットの様子に
ほのぼのするよりイライラする方が多かった。
とのこと。
僕はタングからは可愛さと癒ししか感じなかったので、この感想は少し意外でした。タングの言動をどう感じるかでこの作品を楽しめるかどうかが決まるのかもしれません。
作者のあとがきを読んで納得
タングの子どもらしい言動、少しずつ成長していく様、すごく表現が上手だなと思いましたが、後書きによると作者自身が幼児を育てている真っ最中で、息子さんの普段の言動をデフォルメしてタングに反映しているとのことです。納得感。
経験に勝る取材無し、ですね。
【ネタバレ注意】映画にするなら最後にもう少し盛り上がりが欲しい
※ネタバレ注意
本作は2016年ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれたそうです。動き回るタングを見てみたいので、是非とも映画化してほしいものです。
ただ、もし映画にするなら後半にもう少し盛り上がりが欲しいところです。というのも、読んでて正直後半は少しだれたんですよね・・・
ベンとタングがボリンジャーの島を脱出したのがP319。最終ページがP443ですので、まだ100頁以上残ってます。
「え?残り100頁も何やるの?後日談にしては長すぎくない?あ、ひょっとしてボリンジャーがイギリスに追いかけてきて、最後の対決があるのかな?」
と思ってましたが、結局ボリンジャーの再登場は無し。エイミーとの復縁や赤ちゃん誕生など重要なエピソードはありましたが、それにしてもそこで100頁以上割くのはちょっとどうかなと思いました。
そもそも、ラスボスのボリンジャーがいろいろ匂わせてたわりにはあっさりやられ過ぎだと思うんですよね。ただの自滅だし。
映画化の暁には後日談はもう少しギュッと縮めて(特にロジャーの話は全カットでも良いくらいかも)、ボリンジャーとの対決シーンを派手にしたほうがいいんじゃないかな、と。
いずれにせよ、映画は作ってほしいですね。ピクサーあたりと相性良さそうな作風だし。
映画館のスクリーンでタングの愛らしさが拝める日を夢見て、今回の記事はこのあたりで筆をおきます。